ウサギの家庭医学【第2回】皮膚疾患・体表腫瘤 前編

前回はウサギの体や病気の特徴について総論的にふれましたが、今回からは各論として、臓器・器官別にウサギの飼い主さんが知っておきたい病気の基礎知識を解説していきます。
第2~3回は皮膚疾患・体表腫瘤です。

ふわふわと柔らかい被毛に覆われたウサギの見た目はとても愛くるしく、ずっと触っていたくなるものです。しかし、そのウサギ特有の被毛や皮膚の特徴と、不正咬合や流涙、下痢、カルシウム尿といった症状が組み合わさって皮膚病を引き起こしてしまうことがあります。
そのため、ウサギの皮膚病は皮膚の治療だけでなく、病気を引き起こす背景を考えなければなりません。

はじめにウサギ特有の皮膚・被毛の特徴を解説し、その後、病気の背景も含めてウサギの皮膚疾患について考えていきます。

ウサギの皮膚・被毛の特徴

■皮膚の特徴

ウサギの皮膚は犬や猫と比較すると、薄くて柔らかいのが特徴です。また、品種や性別、年齢、部位などによっても、皮膚の厚さや構造に違いがみられます。
たとえば短毛種のニュージーランド・ホワイト(みなさんがイメージする一般的な白いウサギ)は長毛種のアンゴラ(写真1)よりも皮膚が厚いのが特徴です。また、成熟した雄の皮膚の方が厚くなる傾向があります(文献1)。

写真1:アンゴラ

■被毛の特徴

被毛は、太い一次毛(オーバーコート)と細い二次毛(アンダーコート)の2種類あり、密に生えていて、犬や猫にくらべ、たくさんの毛が1つの毛穴から生えています。足の裏も被毛に覆われており、肉球がありません(写真2)。また、耳介は熱交換により体温調節を行う場所であるため、被毛は薄くなっています(写真3)。

写真2:ウサギの足底。被毛に覆われており、肉球がない

写真3:ウサギの耳介。体温調節を行う場所であるため被毛は薄い

被毛も品種によって違いがみられ、長毛種のアンゴラの方が短毛種のニュージーランド・ホワイトよりも細いアンダーコートが多く生えています(文献2)。アメリカン・ファジーロップ(写真4)やジャージーウーリー(写真5)など、ほかの長毛種の毛も同様にアンダーコートが多いため、もつれて毛玉ができやすくなります。

写真4:アメリカン・ファジーロップ

写真5:ジャージーウーリー

レッキス(写真6)やミニレッキスの毛は、オーバーコートが退化してアンダーコートと同じ長さになっており、毛質が特に柔らかくビロードのような手触りになっています。

写真6:レッキス

■臭腺

ウサギは臭腺として、顎下腺、鼠径腺、肛門腺をもちます。
これらは汗腺が変化したもので、雄でよく発達しており、特に発情期に分泌物を放出します。顎下腺は下顎にあり、雄はしばしば分泌物を縄張り内のものや同居個体に擦り付けてマーキング(チンマーク)を行います(写真7)。鼠径腺は外部生殖器の両側の溝にあり、芳香臭のする茶褐色~黒褐色の蝋様(ろうよう)物質を分泌します。

写真7:顎下腺を物に擦りつけてマーキングを行っている(チンマーク)

■換毛

ウサギは年に2回ほど換毛します。換毛は一般的に頭部から始まり、頸部から体幹背側へ進んで、最後に体幹腹側が抜けていきます。通常は7〜10日以内で完了しますが(文献1)、環境やホルモンバランス、栄養状態などの影響で変動します。加齢とともに明確な換毛期がみられなくなり、多くはダラダラと少しずつ抜けていくようになります。
換毛期は毛玉ができやすく、特に自ら毛繕いができなくなってきている高齢のウサギなどでは、ブラッシングが推奨されます。ブラッシングは胃内の毛球症の予防にもなります。

アンゴラ、ロップイヤー、ドワーフなどの一部のウサギの換毛は変わっていて、脱毛部と発毛部が同時にみられ、つぎはぎ状や斑状模様のようになり、この模様はアイランドスキンと呼ばれています(文献3)(写真8)。数週間にわたって被毛が生えず、脱毛部が残ることもあります。一般的に脱毛部は肌色ですが、発毛部は暗い褐色をしているので、一見すると病気のようにみえてしまうことがありますが、病的ではありません。

写真8:アイランドスキン。脱毛により、毛のある部分が海上の小島のようにみえる

ウサギの皮膚病

皮膚病は「感染性」と「非感染性」に大別されます。
感染性は(1)細菌感染、(2)真菌(カビ)感染、(3)外部寄生虫(ノミやダニなど)感染の3つに大きく分かれます。ただし、細菌感染については、非感染性である湿性皮膚炎が根本として関与していることがほとんどです。非感染性の皮膚炎としては、ストレスや退屈、餌中の繊維質不足、性ホルモンの不均衡などによって起こるとされている心因性脱毛や(文献4)、内臓の病気で皮膚炎やフケが出てくることもあります。

■湿性皮膚炎(および続発する細菌性皮膚炎)

ウサギの皮膚は水分を透過しやすく、湿潤な環境では浸軟し(ふやけ)やすくなります(文献4)。浸軟は角質のバリア機能や組織耐久性を低下させ、感染を起こしやすくします。もともと薄い皮膚は結果として壊死、脱落しやすくなり、これを湿性皮膚炎といいます。結果として細菌の感染を伴うことが多くなります。
原因としては不正咬合や膀胱炎、スナッフル(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)、下痢などがあげられます。そのため、細菌性皮膚炎の治療を行う際は、常にこのような病気がないか確認することが重要です。

1.肉垂の湿性皮膚炎

不正咬合によるよだれ、給水ボトルの位置が高い、投薬時の薬剤の付着などで、口の周囲から肉垂(皮膚のたるみ)が濡れて湿性皮膚炎を起こします。この部位の濡れた状態をウェットデュラップ(Wet dewlap)と呼びます。
肉垂は口元にあるため、ウェットデュラップになると、ウサギは違和感や痒みから患部を自ら噛んで傷つけてしまうことがあります(写真9)。

写真9:肉垂の皮膚炎。左:喉の炎症、右:肉垂の炎症

2.眼の周囲の湿性皮膚炎

眼の疾患や不正咬合による慢性の涙や目ヤニにより、眼の内側から鼻にかけての被毛が濡れます。ウサギの涙や目ヤニは粘稠性が高く(ねばねばした状態)、こびりつきやすいため、湿性皮膚炎を起こしてしまいます。常に涙が見られる状態をランニーアイズ(Runny eyes)と呼びます(写真10)。

写真10:眼の周囲の皮膚炎。左:鼻梁の皮膚に炎症が起きて脱毛している。右:眼瞼(まぶた)と皮膚に炎症による浮腫(皮下に余分な水分が溜まっている状態)がみられる

3.会陰部・肛門周囲の湿性皮膚炎

被毛のもつれや、糞や尿の付着によって会陰部、肛門周囲に湿性皮膚炎が起こります。肥満や不正咬合、背骨の変形などで肛門に口が届かなかったり、毛繕いができなくなると、常に肛門が糞で汚れてしまいます。
また、膀胱炎や尿路結石で頻尿になると会陰部が汚れ、さらにウサギの尿は刺激性が強いため、被毛に付着すると皮膚炎を起こしやすくなります。
なお、会陰部の皮膚は他の部位とくらべて敏感なため、炎症が生じるとウサギは痛みを感じて毛繕いをしなくなってしまうことがあります。このような皮膚の状態をハッチバーン(Hutch burn)と呼びます(写真11)。

写真11:会陰部・肛門の皮膚炎。糞が肛門に付着し、尿で被毛が汚れ、腹部から大腿内側まで炎症が広がっている

4.前肢の湿性皮膚炎

ウサギは前肢を使って顔を掃除したり、毛繕いをします。そのため涙や目ヤニ、鼻汁などがあると、違和感のある眼を擦ったり、鼻汁を取ろうとします。さらに、不正咬合があると、痛む口を前肢でおさえるようになるため、前肢の内側に目ヤニや鼻汁、よだれが付着します。それにより炎症が起こり、ひどくなると腫れや脱毛が起こります(写真12)。

写真12:前肢の皮膚炎。左:唾液や鼻汁で汚れた前肢。右:慢性化すると炎症や脱毛が起こる

■その他の細菌性皮膚炎

1.ウサギ梅毒

Treponema paraluiscuniculiという細菌が原因で、生殖器スピロヘータやトレポネーマとも呼ばれています。

主に交尾によって感染しますが、幼体は母ウサギとの接触や産道において感染します。2〜3カ月齢未満の幼体で好発し(文献5)、不適切な飼育環境やストレスにより免疫が低下すると発症しやすくなります。
特徴的な皮膚病変がみられ、雄のペニスや包皮、雌の陰部が赤くなって腫れあがり、その部位を舐めることから唇や鼻に皮膚病が広がってしまいます。生殖器には炎症がみられず、顔にだけ皮膚病が生じることもあります。
基本的に元気・食欲などの一般状態には影響せず、痒みもありませんが、感染した雌は子宮内膜炎を引き起こし、流産や不妊につながることもあります(写真13)。

写真13:ウサギ梅毒による皮疹。左:雌の外陰部が炎症を起こして腫脹している。右:口唇と鼻に炎症を伴った痂皮(かさぶた)状の小結節(しこり)病変がみられる

2.潰瘍性足底皮膚炎

ウサギは足底全体をベタっと地面につけて歩きます。足底は厚い被毛で保護されていますが、皮膚は薄く、後肢の底に圧力や摩擦、水分の付着や感染などが起こると潰瘍ができることがあります。これを潰瘍性足底皮膚炎といい、ソアホックとも呼ばれます。
コンクリートやプラスチックなどの硬い素材は、足底に圧力がかかりやすく、さらに床材が排泄物で汚れたり、濡れたままになっていると、足底への細菌感染が起こりやすくなります。また、運動不足や肥満、脊椎症や関節炎などで負荷がかかり、足底の皮膚の虚血や壊死を引き起こしてしまいます。炎症が重度になるとウサギは動くのを嫌がるようになり、それによってさらに、足底への負荷が強くなってしまう悪循環に陥ってしまいます(写真14)。

写真14:潰瘍性足底皮膚炎。深層まで炎症が波及すると、患部は丸く腫大(ふくらんで隆起)する

今回は以上となります。次回では感染症の続きと、体表腫瘤について解説します。

この連載は、一般社団法人日本コンパニオンラビット協会(JCRA)「ウサギマスター認定者(ウサギマスター検定1級)」の獣医師で分担しながら、飼い主さんにも知っておいてほしいウサギの病気を解説しています。
・一般社団法人日本コンパニオンラビット協会
https://jcrabbit.org/

[出典]
・写真1~3、7~14…『ウサギの医学』(著:霍野晋吉、緑書房)
・写真4~6…『カラーアトラスエキゾチックアニマル 哺乳類編 第3版』(著:霍野晋吉・横須賀誠、緑書房)

【執筆】
埇田聖也(そねだ・せいや)
獣医師。2018年に山口大学共同獣医学部獣医学科を卒業。同年4月より、奈良県奈良市のあや動物病院 (https://aya-ah.com/) に勤務。犬・猫に加え、ウサギや小型哺乳類、鳥類などのエキゾチックアニマルの診察も積極的に行っている。2022年にJCRAウサギマスター検定1級取得。

【監修】
霍野晋吉(つるの・しんきち)
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部卒業。獣医師、博士(獣医学)。1996年古河アニマルクリニック開業(茨城県)。1997年エキゾチックペットクリニック開業(神奈川県)。現在は株式会社EIC(https://exo.co.jp)の代表を務め、エキゾチックアニマルの獣医学の啓発や教育に関わる活動を行っている。その他、日本獣医生命科学大学非常勤講師、ヤマザキ動物看護大学特任教授、(一社)日本コンパニオンラビット協会代表理事、(一社)日本獣医エキゾチック動物学会顧問なども務める。著書に『カラーアトラス エキゾチックアニマル 哺乳類編 第3版』『同 爬虫類・両生類編 第2版』『同 鳥類編』『ウサギの医学』『モルモット・チンチラ・デグーの医学』(いずれも緑書房)。

[参考文献]
1.Varga M. Skin disease. In: Textbook of Rabbit Medicine. 2002: pp.224-248. Elsevier,Butterworth-Heinemann.
2.Oznurlu Y, Celik I, Sur E, et al. Comparative Skin Histology of the White New Zealand and Angora Rabbits: Histometrical and Immunohistochemical Evaluations. J Anim Vet Adv. 2009;(9):1694-1701.
3.Hoyt RF Jr. Abdominal surgery of pet rabbits. In Current Techniques in Small Animal Surgery. 5th ed. Bojrab MJ, Waldron DR, Toombs JP, eds. 2014: pp.777-790. Teton NewMedia.
4.霍野晋吉. 第2章 皮膚疾患. In: ウサギの医学. 2018: pp.66-104. 緑書房.
5.Cunliffe-Beamer TL, Fox RR. Venereal spirochetosis of rabbits: description and diagnosis. Lab Anim Sci. 1981 Aug;31(4):366-371.