今回紹介するのは、奄美諸島や沖縄諸島のほとんどの島に分布するヘビ「ガラスヒバァ」。琉球地方の方言で「カラスヘビ」を意味します。
本州で時折見かける真っ黒なシマヘビのことを「カラスヘビ」と呼びますが、これとは別種です。

遭遇しやすい毒ヘビ
大きさは70~100センチメートルほどで、小さな頭に大きなクリクリとした眼を持ちます。その名の通り、背中がカラスのように黒っぽく、体の前半部に白もしくは黄色い横帯模様が見られます。また、首には同様の色のⅤ字型の模様があることが特徴です。鱗の表面にはキールがあり、触るとざらざらとした感触がします。

よく見かける時間帯は夜間で、湿地や田んぼ、川沿いなどに行くと高確率で出会えます。ただし、毒ヘビが暮らす島で、夜間に湿地などに行くことはおすすめできません。そのような環境には、カエルやオタマジャクシがたくさん見られるため、それらを主食とするヘビが多く生息しています。ヘビはロープのように細長く、じっとしていると意外に気がつきませんが、このヘビかなりはアクティブで、止まっている姿はあまり見かけないため、発見率は高いです。

上顎の奥にデュベルノワ腺(毒腺)を持っていて、ネズミに対しては効果があるようです。人が噛まれて重症になったという話は聞きませんが、見つけても触らずに観察しましょう。気性は荒く、敵わない敵にも首を持ち上げて威嚇することがありますが、最終的には素早く逃げる方法をとります。水中に潜ったり水面を泳いだりすることも得意です。

新種発見に必要なのは地道な作業
ガラスヒバァは分布が広いため、奄美諸島と沖縄諸島では遺伝的な変異が大きく、模様も異なるので、今後の分類の再検討が望まれます。なかでも、伊平屋島の同種は、私が出会った個体群の中で最も変異があり、もしかしたら新種として記録されるかも……と、淡い期待を抱いています。
これまでさまざまな島を訪れ、そこで暮らすいきものたちと出会ってきました。そうした経験を通じて、その土地ならではのいきものを写真などに記録しておくことの大切さを、改めて実感しています。
近年は、見た目だけで新種だと確信できる発見は少なくなってきています。これからは、同種のように、広域に分布している同じ種だと思われていたものの中から、別種が見つかることが多くなっていくでしょう。私は「これは普通種だから後回し」ということをよくやっていましたが、最近は、出会ったいきもの一つひとつを、確実に撮影するよう心がけています。皆さんも、そのような機会があれば、ぜひしっかりと撮影しておくことをおすすめします。「また出会えるだろう」と思ういきものほど、出会えないものです。
【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(サワガニ、スッポン、田んぼのいきもの、カナヘビ、小型サンショウウオ、ニホンイシガメ、ニホンヤモリ、トカゲ、イモリ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、オオサンショウウオ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』、『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ! イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。
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