飼い鳥の家庭医学【第3回】感染性疾患 ~ウイルス性、細菌性疾患~

前回は、自宅でできる毎日の健康チェックについて紹介しました。しかし、いくら気を付けていても病気にかかってしまうことはあります。

今回は、そんな病気の中からウイルス性と細菌性の感染性疾患について解説していきます。感染症には、発症(症状を示す)すると完治が難しいものもあります。飼い鳥の感染症の多くは鳥類の間のみで感染するものですが、中には私たち人間に感染するものもあります。愛する飼い鳥のため、そして私たち自身のためにも感染性疾患に関する知識を深めていきましょう。

オウム類の嘴・羽毛病:PBFD(Psittacine Beak and Feather Disease)

主にインコ・オウム類で見られ、羽毛や嘴(くちばし)の異常や免疫不全などを引き起こすウイルス性の病気です。日本では、飼育頭数の多いセキセイインコ、海外ではラブバードで多くの報告があります。
主な感染経路は空気感染や経口感染で、親鳥がヒナに給餌した際に感染することもあります。主な感染源は「羽のフケ(羽毛塵)」です。他にも皮膚のフケ、便、脂粉も感染源になります。

原因

PBFDウイルスと呼ばれるサーコウイルスが原因です。羽嚢(うのう)、嘴、爪、免疫細胞などに感染して症状を起こします。ウイルスは環境中でも長期間感染力を維持し、多くの消毒薬に対して抵抗性があります。

症状

症状は、鳥種による感受性や感染経路、浴びたウイルス量、個体の状態により異なります。潜伏期間は21〜25日の場合や、年単位のケースもありますが、多くは幼鳥期に発症します。

・甚急性:肺炎、腸炎、体重減少、敗血症、貧血、急死など
・急性:元気がなくなる、部分的な羽の壊死・ねじれ、出血、羽毛の脱落、貧血、消化不良、下痢など
・慢性:全身の羽毛の異常(羽毛の脱落、羽軸出血、ストレスライン)、脂粉の減少、嘴や爪の過長・脆弱化(ヒビ)・壊死・出血斑、免疫不全など

羽毛症状は小型鳥では風切羽、尾羽などの長羽から大型鳥では体幹正羽などの短羽から始まることが多いです。ヨウムでは、もともと赤い尾羽以外に赤い羽根(レッドフェザー)が見られることがあります。
嘴の異常はクルマサカオウム、キバタン、モモイロインコ、アカビタイムジオウム、オオバタン、タイハクオウムなどの大型鳥で多く、脂粉の減少により嘴に艶が出ることもあります。

無症状で陽性の場合にはキャリアと呼ばれ、他の鳥への感染源になることや、しばらくしてから発症する可能性もあります。

ストレスライン
羽軸出血
風切羽の脱落

診断

症状や遺伝子検査により診断します。検査時点での感染状態を確認するために、遺伝子検査では血液を検体とすることが重要です。

治療・予後

特効薬はないため、免疫を増強する治療をします。インターフェロンの注射や免疫賦活剤の内服(βグルカン、LPSなど)を使用します。免疫低下を起こしている場合は、二次感染防止のために、抗生剤や抗真菌剤を使用することがあります。

PBFDは、無症状もしくは軽度の症状で見つかった場合は陰転(陽性から陰性へ変わること)の可能性が高いですが、強い症状が出ている場合には、治癒が困難になることが多いです。早期発見・早期治療が必要な病気です。

予防

PBFDに有効なワクチンはまだなく、海外で研究段階です。消毒薬には中性電解水などの塩素系の消毒薬が有効です。

セキセイインコ雛病:BFD(Budgerigar Fledglimg Disease)

前述のPBFDに似た、羽毛の異常や肝不全などを起こすウイルス性の病気です。コザクラインコなどのラブバードで多く見られますが、インコ・オウム類やフィンチ類など、幅広い鳥種で確認されています。
感染経路は、主に空気感染・経口感染です。羽毛や皮膚のフケ、唾液、便などが感染源です。親鳥からヒナへの垂直感染の可能性もあります。

原因

鳥ポリオーマウイルスが原因の疾患です。成長中の羽毛や皮膚、肝臓、脾臓、尿細管上皮、心臓、小脳など、幅広い組織で増殖して症状を起こします。PBFDと同様にウイルスは環境中でも長期間感染力を維持し、多くの消毒薬に対して抵抗性があります。1980年にセキセイインコで発見されたため、この病名が付きました。

症状

症状は感染時の年齢などで異なります。感染後10~14日で発症し、感染時期が若いほど発症しやすくなります。成鳥でも感染しますが、ほとんどは無症状です。
症状はPBFDに類似し、セキセイインコでは食欲不振や羽毛の発育異常、皮膚の変色、腹部膨満、腹水、肝臓腫大、頭振(小脳感染)、出血傾向(皮下出血や下血など)が見られます。
ラブバードでは、1歳まで影響を受けることがあり、注意が必要です。

他にも、前兆もなく急死してしまうことや、腎臓腫大を起こすことがあります。

診断

PBFDと同様に、症状や遺伝子検査により診断します。検査時点での感染状態を確認するためには、遺伝子検査で血液を検体とすることが重要です。PBFDとの同時感染を起こすことがあるため一緒に調べることをおすすめします。

治療・予後

こちらもPBFDと同様、免疫を増強する治療を実施します。BFDも、無症状で発見して治療することが重要で、その場合の陰転率は高いです。他には、症状に対する対症療法を実施します。幼鳥の発症個体では予後が悪いことが多いです。

予防

海外ではワクチンがありますが、日本国内では入手ができません。消毒薬には中性電解水などの塩素系の消毒薬が有効です。

ボルナウイルス病

神経に対して影響を与え、様々な症状の原因になることが特徴のウイルス性の病気です。インコ・オウム類の他にも、ジュウシマツ、カナリア、猛禽類や水鳥などでの報告もあり、幅広い鳥種で確認されています。特に中型鳥、大型鳥で注意したい印象です。
感染経路ははっきりとわかっていませんが、経口感染、尿路感染、空気感染、経皮感染などが考えられています。卵からも検出の報告があり、親からヒナへの垂直感染の可能性もあります。

原因

鳥ボルナウイルスが原因です。鳥種によって様々な種類があります。また様々な遺伝子型も確認されており、遺伝子型による病原性の違いも指摘されていますが、まだはっきりとはわかっていません。

症状

潜伏期間が数年になることもあります。腺胃が重度に拡大する「腺胃拡張症(Proventricular Dilation Disease:PDD)」を発症した場合には、慢性的な嘔吐や嚥下障害、食欲不振、進行性の体重減少、そのう停滞、下痢、未消化便などが見られます。また、神経症状が生じることもあり、運動失調、麻痺、失明、振戦、歩行異常、けいれん発作などが見られます。毛引きなどの羽毛損傷行動(FDB)や自咬症などの自傷行動(SMB)の原因になっていることも指摘されています。これらの症状は併発することもあります。

診断

レントゲン検査で重度の腺胃拡張を確認し、血液検査でクレアチニンキナーゼの上昇などを確認します。糞便を用いた遺伝子検査にて検出することもできますが、ウイルスの排出が断続的な場合もあり、1回の検査で検出できないこともあります。

治療・予後

現時点で特効薬はまだ見つかっていません。そのため、症状を軽減する治療が中心になります。消化器症状に対する胃腸薬、神経の炎症を抑える消炎剤、神経症状に対する抗けいれん薬の使用などです。

ボルナウイルスによる疾患は、感染した神経に対して免疫が過剰に働くことで症状が出るため、免疫抑制療法により症状が軽減することもあります。重度に発症し、症状のコントロールができない場合の予後は悪いです。

予防

ワクチンは開発段階であり、現在使用できるものはありません。消毒薬は中性電解水やアルコールなどが有効です。

鳥結核症(鳥の抗酸菌症)

人の結核とは違い、消化器への症状が多くみられる細菌性の病気です。インコ・オウム類、フィンチ類を含む、ほとんど全ての鳥で感染する可能性があります。
経口感染や吸入感染が主で、感染源は糞便などです。時折、皮膚のすり傷から感染することもあります。

原因

マイコバクテリウムが原因の病気です。高温、低温、乾燥などの環境変化や、一般的な消毒剤に対して強い耐性を持ち、環境中でも長期間生存することができます。鳥結核症で原因になるマイコバクテリウムは、人の結核病の主な原因になっているものとは異なります。人への感染の可能性は低いですが、免疫が低下する持病をお持ちの方は注意が必要です。

症状

腸炎や肝臓肥大などの消化器型(下痢、慢性的に元気がない・食欲低下、体重減少、腹部膨満など)が多いです。他にも皮膚型(皮膚に腫瘤を形成)、呼吸器型(呼吸困難など)、骨関節型(跛行など)、眼の病変(眼瞼・瞬膜などに肉芽腫の形成)などの神経症状がみられることがあります。よくある主訴は「なんとなく元気がない」、「食べているのに体重が減る」などです。

診断

症状や各種検査により診断します。レントゲン検査では肝臓・脾臓・腸管の肥大、骨病変の有無の確認、血液検査では肝臓数値の上昇(変化がないこともある)、白血球数の増加(特に単球の増加)、遺伝子検査では糞便や血液、後鼻腔・クロアカスワブなどを確認します。腫瘤がある場合は摘出して、病理検査をすることもできます。

鳥結核症のセキセイインコでみられた肝臓肥大(左が正常)。

治療・予後

治療にはマイコバクテリウムに有効な抗生物質や抗結核薬を使用します。また、症状に合わせて胃腸薬、消炎剤、肝臓薬などを使用します。投薬は長期間に及ぶことが多く再発することがあります。

予防

ワクチンの報告はほとんどなく、一般的に使用されません。
日光や紫外線により死滅しますが、菌の構造上、消毒薬には強い抵抗性を示します。飼育環境の消毒にはアルコールが使用しやすく、器具の消毒に煮沸消毒をすることがおすすめです。

おわりに

飼い鳥のウイルス性、細菌性の感染症に関して、最新の情報も含めてご紹介しました。いずれの病気も早期発見が重要です。お迎えしたばかりの鳥や今まで感染症の検査を受けていない鳥も健康診断で早めに感染症の検査を受けることをおすすめします。

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【執筆者】
永嶋惇平(ながしまじゅんぺい)
獣医師。とくしま鳥の病院(徳島県徳島市)院長。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。神奈川県の鳥類専門病院「横浜小鳥の病院」に勤務後、2025年5月に徳島県徳島市にてとくしま鳥の病院を開院。鳥類臨床研究会、Association of Avian Veterinarians(鳥類獣医師協会)所属。飼い主と動物に寄り添った診察に尽力している。
X:@bird_vet
Instagram:@jumpeitoritori
LINE:とくしま鳥の病院

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