はっけん!日本の爬虫類・両生類【第33回】イワキサンショウウオ Hynobius sengokui (Matsui, Misawa, Yoshikawa et Nishikawa, 2022)

これまで「トウキョウサンショウウオ」だと知られていた種の中に、実は遺伝的に分化した1種が含まれていたことが分かりました。その種は福島県の東南部や茨城県、栃木県東部に暮らす個体群で、2022年に「イワキサンショウウオ」と名付けられました。

イワキサンショウウオの成体

イワキサンショウウオの生態

トウキョウサンショウウオとの区別は非常に難しく(胴が少し短いなど)、採集場所が分からなければ区別がつかないほどです。

繁殖期は3~4月で、丘陵地の湿地や水田脇の浅い湧水などに、クロワッサン型の袋に包まれた卵を産みます。止水性のサンショウウオで、イノシシのヌタ場(泥浴びをする場所)にも卵を産んでいることが報告されています。近年、分布域に侵入しているアライグマによる被害が知られており、水面を隠すなどしてアライグマの被害を減らそうとしていますが、管理が行き届かない場所では数を減らしていることが想定されます。

イワキサンショウウオの卵塊
イワキサンショウウオの幼体

この東北地方や北関東地方に暮らすサンショウウオの研究のこれからが、楽しみでしかたありません。おそらく、まだ外見上だけでは区別がついていない種がいるのではないかと、ひそかに思っています。

イワキサンショウウオの頭部

千石正一の名が付く、今後の研究を象徴するサンショウウオ

このサンショウウオの種小名(学名のうち、属名のあとに続く名称)には、故・千石正一先生のお名前がついています(sengokui)。千石先生は、マスコミなどを通して爬虫類・両生類に関する普及活動を長年続けられていました。ずば抜けた知識量といきものに対する愛情、そして、いきものを見つけるセンスにおいて右に出る者はいませんでした。生前、何度か先生にお話を伺ったことがありますが、どんな質問にも答えてくださいました。同じ雑誌で連載を持てたことが今でも私の誇りです!

世界各地できっちりと仕事をされてきた千石先生には頭があがりません。私も先生の姿勢を見習い、写真を通してこの素晴らしき爬虫類・両生類の世界をどんどん紹介していきたいです。

【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(田んぼのいきもの、カナヘビ、小型サンショウウオ、ニホンイシガメ、ニホンヤモリ、トカゲ、イモリ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、オオサンショウウオ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』、『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ! イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。

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