南フランス・プロヴァンスへの旅も、今回で5回目です。これまでは、パリからTGV(フランスの高速鉄道)でアヴィニョンへ向かうのが旅の始まりでした。
今回は少し趣向を変えて、コート・ダジュールからスタートすることにしました。せっかくなので、この街で一泊し、いつもとは違う景色の中で旅の幕開けを迎えました。

年間300日近くが晴れといわれるコート・ダジュールは、青い海と明るい陽射しに恵まれた、人にも犬にも心地よい場所です。
街を歩くと、朝の散歩を楽しむ犬や、カフェのテラスで飼い主の足元に寄り添う犬、公園でのびのびと過ごす犬など、たくさんの犬たちに出会いました。犬たちが街の風景に自然と溶け込む姿からは、この土地らしい穏やかな時間の流れが感じられました。
一方で、美しい海岸線のビーチの多くは、犬の立ち入りが禁止されていました。そのため、犬たちと出会えたのは、主に海辺のプロムナードや街中の公園でした。

そんな公園で出会った紳士が、この地域ならではの犬事情を教えてくれました。
この地方では犬が入れないビーチが多い一方で、隣町サン・トロペには犬と過ごせるビーチがいくつかあるそうです。動物愛護活動家としても知られるブリジット・バルドーが長年この地で活動してきたことも、その背景の1つではないかと話してくれました。

その話を聞いていると、ふとハワイ・オアフ島で感じた犬事情を思い出しました。オアフ島のビーチも、犬を連れて入れないことがほとんどです。世界的な観光地では、自然を守るためのルールと人や犬が快適に過ごすためのルールが、その土地に合わせて共存しています。犬たちとの出会いを通して、その土地の文化や暮らしが見えてくるのも旅の楽しみです。

街を歩いていると、人々の暮らしぶりにも目が向きました。朝は市場やパン屋がにぎわい、仕事前にカフェでエスプレッソを楽しむ人たちを見かけました。夕方に海辺を散歩していると、テラス席で家族や友人とちょい飲みの時間(フランス語でアペロという)を楽しむ姿があちこちで見られました。
この地域は、仕事だけではなく、家族・友人との時間や休暇を大切にする土地柄だといわれています。人も犬も肩の力を抜いて、同じ時間をゆったりと楽しんでいるように感じられました。
コート・ダジュールで出会った犬たちは、美しい景色だけではわからない、この土地らしい豊かな時間の流れを静かに教えてくれたように思います。

【写真・文】
蜂巣文香(はちす・あやこ)
写真家。犬、猫、コンパニオンバードなどのペット写真をはじめ、手仕事やライフスタイルなどさまざまな分野で“伝わる”写真を日々撮影している。広告や雑誌、書籍、WEBなど幅広く活躍中。欧米を中心とした海外での撮影経験も豊富。愛犬雑誌「Wan」(緑書房)でもおなじみのカメラマンで、柴犬をモチーフにしたカレンダーシリーズ「しばいぬ(卓上)」「日本の柴犬(壁掛け)」「黒柴(壁掛け)」(緑書房)も毎年好評を博している。
Instagram:dogtionary_hachi
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