チワワは人気の高い犬種であり、2025年のジャパンケネルクラブ(JKC)の犬籍登録頭数では、トイ・プードルに次いで第2位となっています。
小さな体と大きな瞳が魅力である一方、「頭に対して眼が大きく、前方に位置している」という特徴があります。そのため角膜に傷がつきやすく、眼の病気で動物病院を受診する機会が多い犬種でもあります。実際に、眼科診療に携わる獣医師105名を対象とした調査でも、チワワは受診頻度の高い犬種の1つとして報告されています。
今回は、チワワに多く見られる眼の病気やその症状、治療法にくわえて、大切な眼を守るために、チワワと暮らすみなさんに日頃から気を付けてもらいたいポイントを紹介します。
チワワに多い眼の病気
チワワでよく見られる眼の病気として、図1のような疾患が報告されています。今回はこの中から、比較的遭遇する機会の多い①角膜潰瘍、②角膜内皮疾患、③白内障、④緑内障の4つを解説します。

角膜潰瘍
チワワは、角膜潰瘍(かくまくかいよう)が比較的多く見られる犬種として知られています。
角膜潰瘍とは、眼の表面を覆う透明な膜(角膜)に傷ができた状態です。角膜の表面にとどまる浅い潰瘍もありますが、細菌や真菌(カビ)などの感染を伴う場合には急速に傷が深くなり、角膜に穴が開く(角膜穿孔:かくまくせんこう)こともあります。そのため、眼をしょぼしょぼさせる、涙が増える、白く濁るなどの症状がみられたら、早めに受診することをおすすめします。
治療
眼をこすって悪化させないように、エリザベスカラーを装着します。
また、潰瘍の深さや感染の有無に応じて、抗菌薬や角膜が溶けてしまうのを抑える点眼薬・内服薬などを使用します。
潰瘍が深い場合や進行が速い場合、また角膜に穴が開く危険がある場合には、角膜を補強する手術が必要になることがあります。


角膜内皮変性(角膜内皮ジストロフィーを含む)
角膜の一番内側には、角膜内皮細胞という細胞が並んでいます。この細胞は再生能力が極めて乏しく、加齢とともに減少します。
この角膜内皮細胞は、眼の中の水分が角膜へ過剰に入り込むのを防ぐ「バリア」のはたらきと、角膜内に入った余分な水分をくみ出す「ポンプ」のはたらきを持ちます。この2つのはたらきによって、角膜は適度な水分量に保たれ、透明な状態を維持しています。
角膜内皮細胞の数が減少したり、はたらきが低下したりすると、バリアとポンプがうまく機能しなくなり、角膜に水分がたまって白く濁ります(=角膜浮腫)。
初期の頃は特別な症状はありませんが、進行すると角膜内に水ぶくれのようなものができ、破裂して角膜潰瘍が生じ、不快感や痛みが起こることがあります。
眼の中の炎症や緑内障などが原因で生じることもあります。しかし、チワワでは、原因となる眼疾患がないにもかかわらず、内皮細胞が正常以上の速度で徐々に減少する、原発性角膜内皮変性(角膜内皮ジストロフィーとも呼ばれる)が知られています。
この疾患はチワワを含む特定の犬種で多くみられることから、遺伝性疾患であることが疑われています。
また、一般的に両方の眼で生じ、長期間にわたって継続的に進行することが知られています。オスとメスでの差はなく、6~13歳の中高齢犬で多く見られ、平均発症年齢は9.5歳です。
治療
失われた角膜内皮細胞を回復させる治療はないため、浮腫の軽減や痛みを和らげることを目的とした治療が行われます。

白内障
白内障とは、水晶体やその周囲を包む水晶体のうが白く濁る病気です。濁りが水晶体全体に及び、両眼に発症すると、視力が著しく低下し、失明することもあります。白内障は、外傷、眼の炎症、糖尿病などの代謝性疾患、瞳孔膜遺残(どうこうまくいざん)や硝子体血管の遺残(本来は成長に合わせてなくなるはずの組織などが残ってしまうこと)などの先天異常、栄養障害などによって起こることがありますが、チワワでは遺伝性が疑われる白内障が知られており、若齢で発症することもあります。
発症初期では明らかな症状はありませんが、進行すると視力の低下だけでなく、炎症や緑内障、網膜剥離などの合併症のリスクが高まります。
治療
根本的な治療は外科手術となりますが、発症初期の段階では白内障の進行を遅らせる目的で点眼薬やサプリメントを使用することもあります。

緑内障
緑内障は、眼圧上昇により視神経に障害が起こり、視覚障害を生じる進行性の病気です。チワワは緑内障の代表的な好発犬種ではないものの、7歳ごろから発症することが多いと報告されています。
発症すると急速に視力を失うこともあります。また、一度障害を受けた視神経を元に戻すことはできません。眼の充血、角膜の白濁、強い痛み、瞳孔が開いたままになるなどの症状が見られた場合は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
治療
眼圧を下げる点眼薬や点滴などによって治療を行います。緑内障は進行が速いため、視力を守るためにはできるだけ早く治療を開始することが重要です。
内科治療だけでの眼圧コントロールが難しい場合には、眼圧を下げるための外科治療が行われます。

大切な眼を守るために
眼を観察する習慣をつけましょう
チワワは、眼の病気が比較的多い犬種です。左右の眼の大きさ、色、輝きが同じかどうかを毎日チェックして、「いつもの様子」を覚えておきましょう。眼が赤い、涙が多い、白く濁る、しょぼしょぼする、眼を気にしてこするなど、普段と違う様子がないか確認してあげてください。
眼をぶつけないように注意しましょう
家具の角やケージ、他の犬や同居動物との遊びなどで眼を傷つけることがあります。抱っこ中の転落や、子どもとの接触にも注意が必要です。
定期的に眼科検査を受けましょう
正常時の眼圧や涙液量、網膜の状態などを把握しておくことで、病気になった際の変化を判断しやすくなることがあります。7歳ごろからは、健康診断とあわせて眼科検査を受けることをおすすめします。
異常を感じたら様子を見ずに受診しましょう
眼の病気は進行が早いものもあります。特に急に白く濁った、充血が強い、眼を開けられない、強い痛みがあるといった症状は、緊急性が高い場合があるので、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
おわりに
眼の病気は、初期には目立った症状が現れないものもあれば、緑内障のように短期間で視力を失うものもあります。日頃から愛犬の眼をよく観察し、「いつもと違う」と感じたら早めに動物病院を受診しましょう。ご家族の小さな気付きが、愛犬の視力と生活の質を守ることにつながります。
[参考文献]
・ジャパンケネルクラブ(JKC)ホームページ、https://www.jkc.or.jp
・Caballero V, Kobayashi A, Umeda Y, et al. Common Ophthalmic Conditions in Popular Dog Breeds in Japan: Insights From a Survey of 105 Veterinarians Practicing Ophthalmology. Veterinary Ophthalmology. 2026.
・Iwashita H, Wakaiki S, Kazama Y, et al. Breed prevalence of canine ulcerative keratitis according to depth of corneal involvement. Veterinary Ophthalmology. 2020.
・American College of Veterinary Ophthalmologists Genetics Committee. The Blue Book: Ocular disorders presumed to be inherited in purebred dogs. 15th ed. 2023.
【執筆者】
重山純子(しげやま・じゅんこ)
獣医師。ファーブル動物病院(大阪府門真市)眼科・勤務医。日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科卒業後、大阪府、東京都内の動物病院に勤務。日々、動物の眼科診療に携わる。比較眼科学会に所属。

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