2026年6月、動物の大量死に関するニュース2件が飛び込んで来ました。1つは、房総沿岸に漂着したハシボソミズナギドリ。もう1つは、山口県岩国市で飼育・繁殖されているアオダイショウの白化個体、通称「シロヘビ」の大量死でした。
両種とも過去にも大量死しており、私は検体の一部の分析を担当しました。そして、迅速に結果を公表し、その中で可能な限り次の事態に備えることを提案しました。ですので、この度の悲報の連続に接し、悔しい思いです。
今回は、気持ちを切り替えて、当時を回想しつつ両事例の紹介をします。
海鳥とシロヘビがまた死んだ……
私たちが調べたハシボソミズナギドリは、北海道道東地方の沿岸に漂着した個体でした。検体は、北海道庁から当方の野生動物医学専門施設に運ばれました。かなり変質していましたが、運よく腎臓は組織病理の検査に耐えたので、細菌コリネバクテリウム、原虫コクシジウム、および吸虫レニコーラの重感染だと特定できました(図1および2)。


一方、シロヘビは国の天然記念物ですので、所管は文化庁となり、大量死が起きた山口県内の教育委員会から当方に依頼がきました。いずれも公的機関からの正式依頼なので、報告書の作成は必須です。後日、許可をもらってこれら内容を報文として公表し、現在はweb公開もされています。
・オホーツク海沿岸で発見されたハシボソミズナギドリPuffinus tenuirostris死体の剖検記録、知床博物館研究報告Bulletin of the Shiretoko Museum、2017年https://shiretoko-museum.jpn.org/media/shuppan/kempo/3904s_asakawa-etal.pdf/
・国の天然記念物岩国のシロヘビ(Elaphe climacophora)から見出された寄生線虫、獣医畜産新報、2012年
https://irdb.nii.ac.jp/01043/0004551359
今年6月に報道されたシロヘビの短期間の連続的斃死事案では、大量死となった原因根拠の1つとして、寄生虫感染に言及されていました。しかし、以前に私たちが分析した同事例では、ヘビ類特有の寄生虫に加えてシロヘビ腸内で細菌クラミジアによる感染症も認められました(図3および4)。今回の事例ではどうだったのでしょう。気になっております。


大量死は普通のこと?
見出しの質問「大量死は普通のことなのか?」への答えはイエスです。今回は2例を紹介しましたが、これらは今後も繰り返し起きるでしょう。現に、私が昔関わったものと同じような事例が、今こうしてニュースになっているのですから……。
しかし、諦めてはいけません。大量死の原因を突き止めて何とかしようとすることは、野生動物医学の大事な使命の一つです。それにしても、シロヘビは国の天然記念物なので、もう少し何とかならなかったのかとは思いますが……。
いずれにしても、私たちのやってきたことは、大量死に対してほぼ無力であったとも言えます。だからといって、繰り返しますが、自暴自棄になるのは誰にとっても危険だと思います。野生動物関係者は、少しでも大量死を少なくできると信じながら日々対峙しています。
ちょうど1年前、第26回にて、富山市内で100羽以上の水鳥大量死を紹介しました。原因は熱中症によるものとされたようです。
しかし、前述のミズナギドリのように、大量死を誘引した可能性がある保有病原体や、化学汚染物質の可能性(大量死の副因)を検査したのかどうか不明です。意外と、副因が将来、別の大量死の主因になるかもしれません。そういった要因・背景等がわかれば、対策しやすいのではないでしょうか。
本連載は次回が最終回です。今回のような大量死関連は、noteで発信します。気になる方はぜひ読んでみてください。
https://note.com/fvetsnokai/
おわりに―最終回に向けて
ところで、昨今の福岡県議会関連の報道を見るに、野生動物医学を推進する上で必須の理念「ワンヘルス」が、利権・汚職等に塗れていたとされ、重大な局面、岐路に立たされています。
ですがこの件は、落ち着いた時に前述のnote等で発言するとして、最終回は簡単な総括に加え、「日本野生動物医学会認定専門医協会」認定専門医(感染・病理分野)として、私が関わったことを紹介します(当該専門医認定証は第28回の中で明示)。
【執筆者】
浅川満彦(あさかわ・みつひこ)
1959年山梨県生まれ、幼少一時期、父親転勤のため茨城・千葉両県ですごし、酪農学園大学入学・勤務。名誉教授、獣医師、野生動物医学専門職修士(UK)、博士(獣医学)、日本野生動物医学会認定専門医。現在、「野生動物の死と向き合うF・VETSの会」代表として執筆・書評・講演活動・アドバイス等を行う。おもな研究テーマは、獣医学領域における寄生虫病と他感染症、野生動物医学、進化獣医学(仮)、特に生物地理の側面から宿主-寄生体関係を眺望。2026年5月に環境省自然環境局長賞受賞。主著『野生動物医学への挑戦 ―寄生虫・感染症・ワンヘルス』(東京大学出版会)、『野生動物の法獣医学』(地人書館)、『図説 世界の吸血動物』(監修、グラフィック社)、『野生動物のロードキル』(分担執筆、東京大学出版会)、『獣医さんがゆく―15歳からの獣医学』(東京大学出版会)、分担執筆分として『新獣医学辞典』、『犬の内科臨床Part2』、『神の鳥ライチョウの生態と保全』、『獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠寄生虫病第3版』(以上、いずれも緑書房)、近刊として『 君たちの保全医学―地球環境を守るために知り・学び・変わる』(文永堂)。
Facebook…https://www.facebook.com/mitsuhiko.asakawa/
note…https://note.com/fvetsnokai

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