飼い鳥の家庭医学【第5回】鳥の消化器のはたらきと、消化器疾患

日頃から、診察で様々な小鳥を診ますが、消化器に関わる疾患は最も多く見られます。消化器とは、食物の消化に関わる臓器の総称で、鳥の消化器は人間のものとも、犬や猫とも少し異なります。
そこで、今回は飼い鳥の消化器疾患に関して解説していきます。消化器の構造やはたらきと、よく遭遇する病気を紹介するので、この機会に知識を深めて、愛鳥の健康管理に役立ててみてください。

鳥類の消化器の構造とはたらき

口腔〜咽頭

鳥類の口は嘴(くちばし)になっていて、歯がないのが特徴です。

口の中(口腔内)も様々で、オウム類では、舌を指のように器用に動かして種子の皮をむいたりします。
ローリー/ロリキート類の舌は、花粉や花蜜を集めやすいように、先端がブラシ状になっています。

また、唾液の分泌は少なく、口の中は乾燥していることが多いです。

図1.ルリメタイハクオウム(オウム類)の舌
図2.オトメズグロインコ(ローリー類)の舌。ブラシ状になっている
図3.ブンチョウの舌

食道・そのう

食道は頚部(けいぶ:首)の右側にあり、胸の辺りで膨らんで、「そのう」を形成します。
そのうは、食物の貯蔵・湿潤、消化を助け、一部の栄養吸収に関わります。そのうの有無や形は、鳥の種類により様々です。フクロウなどの鳥では、そのうがありません。一方、ハトやフラミンゴでは、そのうからクロップミルクを分泌して幼鳥に与えます。

腺胃・筋胃

腺胃は胃酸による消化を行う部分で、私たちの胃と同じような機能を持ちます。
筋胃はいわゆる「砂肝」のことで、餌をすりつぶすためのグリット(砂粒)が貯められており、歯の役割を果たします。

小腸

小腸では、消化酵素による食物の消化と、栄養の吸収が行われます。小腸にはいくつかのループ(U字型の折返し)があり、腸管結石はこの部分で詰まりやすいです。

大腸

盲腸・結腸・直腸から構成されます。盲腸はセキセイインコなどには無く、ニワトリやウズラなどは発達しています。
大腸では主に、水分やミネラルの吸収を行います。

総排せつ腔(クロアカ)

総排せつ腔は、直腸・尿管・卵管・精管がつながった部分のことです。尿酸と便がここで一緒になるため、鳥は尿酸と便を同時に排せつします。
また、総排せつ腔には逆ぜん動(内容物を反対向きに運ぶ動き)という機能があり、総排せつ腔に入った尿酸が直腸に運ばれ、水分やミネラルを再吸収します。この仕組みがあるため、鳥類は水分をそこまで多く摂取しなくても生活することができます。

代表的な口腔〜食道の疾患

口内炎・口角炎

口内炎は、口腔内の粘膜が炎症を起こす疾患です。
口角炎では、上の嘴と下の嘴の付け根(口角)が炎症を起こします。炎症が悪化すると膿瘍(のうよう)を形成することもあります。

細菌によるものが多く、ウイルスなどの感染によるものもあります。他にも、鋭利なもので口腔内を傷つけたり、異物の摂取、熱傷、観葉植物などの刺激性物質の摂取も原因になります。
ビタミンAが足りないと粘膜のバリア機能が低下し、この病気が起こりやすくなります。

原因によりますが、オカメインコやセキセイインコ、ブンチョウ、ハト類、ボウシインコ類、猛禽類などで見られます。

■症状
食欲低下や口をもぐもぐする、舌をしきりに動かす、口腔内や口角が汚れる、プラークが形成されるなどの症状があります。
口腔内の視診、分泌物やプラークの鏡検・培養検査などで診断します。

■治療
原因に合わせて、抗生剤、抗真菌剤、抗寄生虫薬や、消炎剤の使用をします。消毒薬により口腔内の洗浄をすることもあります。
適切に栄養管理をし、ビタミンA不足を解消することで予防ができます。

図4.口角炎と下嘴に炎症があるブンチョウ
図5.口角炎と口内炎を発症したセキセイインコ

そのう内異物

そのうの中に異物が形成される病気です。異物の多くは塊になった繊維で、間にシードなどが入り込むことで徐々に大きくなっていきます。
主に、繊維の慢性的な摂取が原因です。たとえば、ロープ状のおもちゃや布、カーペット、洋服の毛玉などです。

セキセイインコで多く見られますが、オカメインコなどの他の小型鳥種でも見られます。

■症状
慢性的な吐き気や嘔吐・吐出、口臭(生臭いにおい)、食欲低下などの症状があります。異物のサイズが大きくなるまで症状が出ないことも多いです。
そのうの触診やレントゲン検査(造影をする場合もある)で診断します。

■治療
そのうを切開して摘出します。異物が小さい場合は催吐処置で吐かせることもありますが、誤えんのリスクもあり注意が必要です。
繊維を食べ過ぎていないか、日頃から注意して観察しましょう。

そのう下垂

セキセイインコに多い疾患で、そのうが拡張し、支える靭帯が伸びてしまい、垂れ下がってしまう状態です。
胸の辺りが大きく膨むので、外見からもよくわかります。
餌の食べ過ぎや一気食い、水の飲み過ぎなどが原因になることが多いです。その他にも、ボルナウイルスや先天性の奇形が原因になることもあります。

■症状
そのうが拡張するだけで他の症状が出ないこともありますが、吐き気などの症状が出ることもあります。
外見での見極めやレントゲン検査などで診断します。

■治療
強い症状がなければ様子を見ることがありますが、そのう圧迫帯で矯正したり、正しい位置に固定することもあります。また、悪化を防ぐために、一気食いをする子には少量の餌を数回に分けて与えたり、水を与える頻度を減らすこともあります。

図8.そのう下垂のセキセイインコ(胸のあたりが大きく膨らんでいる)

代表的な胃の疾患

胃炎・胃腫瘍

飼い鳥でよく見られる疾患です。腺胃や筋胃が炎症を起こして拡張したり、腫瘍化したりします。胃炎を重度に起こした場合、吐き気などの後遺症が残ることもあります。
生活環境や食事、感染など様々な原因で発症するため、注意が必要です。
寒冷による胃腸運動低下や免疫低下が原因になることもよくあります。

セキセイインコで多いです。その他にマメルリハインコ、コザクラインコ、オカメインコでも見られます。

■症状
吐き気や嘔吐・吐出、未消化便(全粒便や細粒便)、下痢、悪化すると黒色便や貧血を起こします。
診察では、症状や糞便検査、レントゲン検査を行います。

■治療
症状に合わせて、胃腸薬や二次感染予防のための抗生剤、抗真菌剤を使用します。
胃の負担が少ない食事への切り替えを検討することもあります。

図9.胃炎のセキセイインコで見られた未消化便

グリットインパクション

筋胃の中のグリット(砂粒)が過剰に蓄積することで、消化機能に異常が生じる疾患です。
ボレー粉や塩土、焼砂、サンドパーチなどの過食が主な原因です。

セキセイインコやコザクラインコ、オカメインコなどでよく見られます。ブンチョウなどのフィンチ類での発生は稀です。

■症状
嘔吐・吐出、食欲不振、排便の減少が見られ、便に過剰なグリットが排出されることがあります。
グリット源の過剰摂取の経歴やレントゲン検査にて診断します。

■治療
胃腸薬によりグリットの排出を促したり、グリット供給の停止や種類の変更(カトルボーンの使用など)をして、過剰なグリット源の摂取を防ぎます。

図10.グリットが過剰に排せつされた便

代表的な腸の疾患

腸炎

腸が炎症を起こし、消化・吸収不良を起こす疾患です。胃炎と併発することもよくあり、セキセイインコやブンチョウなど、様々な鳥種で見られます。
細菌などによる感染性のものや、金属中毒、ペレットが合わない、寒冷などのストレスなどが原因としてあげられます。

■症状
下痢、便に気泡が混じる、粘膜便(ブンチョウなど)、下血、便が臭う、食欲不振、嘔吐、盲腸便の増加(ニワトリ、ウズラなど)が見られます。
検便やレントゲン検査などで診断します。

■治療
胃腸薬や原因に合わせて、抗生剤、抗真菌剤、抗寄生虫薬などを使用します。ペレットが合わない場合には、種類の変更を検討します。

腸閉塞

外側からや、塞栓による内側からの圧迫で腸管が詰まったり、消化管の運動が停止したりしてしまう状態です。早急な対処が必要になる病気です。
あらゆる鳥種で見られ、腸管結石はオキナインコやセキセイインコで多く、キビ詰まりはセキセイインコで多いです。

塞栓には、腸管結石やキビ詰まりなどがあり、外側からの圧迫には卵塞症、体腔内の腫瘤、腹壁ヘルニア(嵌頓ヘルニア)などが原因になります。
腸管結石は繊維や人毛、羽毛などの繊維物の慢性的な摂取が原因になることがあります。
消化管の運動が停止してしまう原因には、寒冷や金属中毒、卵黄性腹膜炎などがあります。

■症状
嘔吐・吐出、排便量の減少、排便の停止、脱水などの症状が見られます。
症状やレントゲン検査(造影検査も実施することあり)などで診断をします。

■治療
自力排出が困難な塞栓物は、外科的に摘出します。排出可能なものは、消化管運動の促進剤などを使用します。
キビの給餌をやめることや、繊維物を摂取させないことなどで予防できます。

図11.キビ詰まりで尿酸のみが排せつされているセキセイインコ

※総排せつ腔の病気は、「生殖器疾患」の回で解説します。しばらくお待ちください

おわりに

消化器疾患はさまざまな原因で生じますが、普段の健康管理で防げるものも多くあります。
当連載には、この他にも健康チェックに役立てられる記事があるので、活用してみてください。

[参考文献]
・Brain L. Speer. Current Therapy in Avian Medicine and Surgery First Edition, Elsevier, 2016.
・Branson W. Ritchie, Greg J. Harrison, Linda R. Harrison. Avian Medicine :  Principles and Application, Wingers Publishing, 1994.
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・Greg J. Harrison, Teresa L. Lightfoot, Clinical Avian Medicine, Spix Publishing, 2006.
・Indranil Samanta, Samiran Bandyopadhyay. Pet Bird Diseases and Care, Springer Nature Singapore Pte Ltd, 2017.
・Robert B. Altman. Avian Medicine and Suegery, W.B, Saunders Company, 1997.
・海老沢和荘 著、エキゾチック臨床 Vol.7、学窓社、2012年
・海老沢和荘 著、エキゾチック臨床 Vol.10、学窓社、2013年
・小嶋篤史 著、できる!!小鳥の臨床-Conplete Mission-、インターズー、2019年
・Nigel Harcourt-Brown, Jhon Chitty編、福士秀人 ほか 訳、「オウムインコ類マニュアル 第2版」、学窓社、2005年

【執筆者】
永嶋惇平(ながしまじゅんぺい)
獣医師。とくしま鳥の病院(徳島県徳島市)院長。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。神奈川県の鳥類専門病院「横浜小鳥の病院」に勤務後、2025年5月に徳島県徳島市にてとくしま鳥の病院を開院。鳥類臨床研究会、Association of Avian Veterinarians(鳥類獣医師協会)所属。飼い主と動物に寄り添った診察に尽力している。主な著書に『15歳まで文鳥が元気で長生きする育て方』(エクスナレッジ、2026年)。
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