前回は、よく遭遇する感染性疾患の中から、代表的なウイルス性疾患と細菌性疾患について紹介しました。
今回は、真菌性疾患と寄生虫疾患を中心に、飼い主さんに知っておいて欲しい感染症を紹介します。
メガバクテリア症・マクロラブダス症
マクロラブダス・オルニトガスターと呼ばれる、酵母様真菌が原因になるカビの病気です。胃炎症状など、消化器に影響を与える病気です。国内では、セキセイインコでよく見られ、最近ではキンカチョウでも多く見られるようになりました。
主な感染経路は、親からヒナへの給餌による垂直感染と考えられています。感染した鳥と同居鳥の間での便や吐物の摂取により、水平感染することもあります。主に胃に感染しますが、腺胃と筋胃の中間帯で障害が出やすいです。
症状
感染初期は無症状のことがほとんどです。多くの場合は、感染が進行した中齢くらいから症状を示し、吐き気や嘔吐、食欲不振、体重減少、胃痛症状(沈鬱、膨羽、前傾姿勢、腹部を蹴る)などの胃炎症状が見られます。また、摂取したシードが消化できず、細粒便や全粒便がでることもあります。
胃炎症状が進行すると、胃出血により黒色便・吐血・貧血を起こして症状が重篤化し、胃に穴が開く症例も報告されています。
通常は、糞便検査にて診断が可能です。

治療
メガバクテリアに有効な抗真菌薬の内服薬や注射薬を使用します。当院では、多くの場合に、6週間の投薬期間と2週間の休薬期間の8週間(2ヶ月間)で治療を実施します。
胃腸薬や抗生剤、胃出血の場合は止血剤など、症状に合わせて薬を投与します。
消化不良があれば、胃への負担が少ない食事への変更(キビの中止、エンバクの使用、ペレットの使用)も検討します。
早期からの治療であれば、多くは後遺症もなく治癒しますが、発症後からの治療の場合には、検査上ではメガバクテリアが消失しても、胃炎症状などの後遺症が残ることがあります。早期発見・早期治療が重要です。
お迎えしたばかりの若いうちに、検診を受けることをおすすめします。
クリプトスポリジウム症
クリプトスポリジウムが原因の病気です。主に胃や腸に症状が出ます。コザクラインコで特に多く、幼いオカメインコなど他の鳥でも見られます。
オーシスト(休眠状態の寄生虫)を含んだ糞便により汚染された餌や水を、経口摂取して感染するケースがほとんどです。そのため、汚染された給餌・給水トレイ、ケージ用品、おもちゃなどが感染源になることもあります。
症状
胃の症状はコザクラインコやフィンチで多く、吐き気や嘔吐、削痩、黒色便などが見られます。
腸の症状はオカメインコの幼鳥(2~3ヶ月齢)などで多く、軟便や下痢、削痩などの症状が見られます。他にもキジ類、ガン・カモ類、フィンチ類、ラブバードで鼻炎、結膜炎、副鼻腔炎、気のう炎などによる呼吸器症状(咳、くしゃみ、呼吸困難など)が見られる場合や、キジ類、フィンチ類で腎不全を起こすケースもあります。
糞便検査やレントゲン検査で診断します。
治療
完全に駆虫することは困難です。そのため、症状に応じて対症療法(胃腸薬、止血剤、二次感染予防の抗生剤など)を実施します。
この寄生虫は、一般的な消毒薬や環境変化にも強い耐性がありますが、熱湯消毒は有効です。
トリコモナス症
トリコモナスという鞭毛虫(寄生虫の1種)が原因で、消化器に症状が出る病気です。ブンチョウ、セキセイインコ、カナリアでよく見られる他、1歳以下の免疫の低いヒナで発症することが多く、成鳥では症状が出ないこともあります。
親鳥からヒナへ給餌する際の経口感染が主で、糞便等で汚染された器具や飲水を介しての感染もあります。
症状
消化器症状が出ることが主な症状で、口の中に粘液が溜まりネバネバする、口を気にする(舌を頻繁に動かす、嘴を擦り付けるなど)、食欲不振、傾眠、膨羽、削痩、嘔吐・吐出、下痢などの症状があります。ヒナでは、さし餌を拒否するようになることもあります。
症状が進行すると、食道やそのうにできもの(肉芽腫)が形成され、通過障害による嚥下困難を起こすこともあります。
副鼻腔に感染した場合、くしゃみ、鼻水、結膜炎などの症状を引き起こすことがあります。ブンチョウでは、耳が腫れることもあります。
そのう液検査や口腔内を綿棒などでふき取って、トリコモナスの有無を確認します。



治療
有効な抗原虫薬を使用します。症状が出ている場合は、症状に合わせた対症療法(胃腸薬、消炎剤、二次感染防止のための抗生剤、抗真菌剤など)を実施します。
この寄生虫には、熱湯消毒、塩素系消毒薬、アルコール消毒薬などが有効です。
コクシジウム症
コクシジウム類(寄生虫の1種)が腸管に寄生することが原因の疾患です。
ブンチョウで多く見られます。また、寄生する宿主が限られているため、ブンチョウに寄生したコクシジウムがオウム類に感染するなどの可能性はほとんどありません。
糞便の経口摂取で感染します。汚染された食事や水を摂取することで、感染する可能性もあります。
症状
通常は無症状のことが多いですが、軟便や下痢、粘液便、腹部膨大、血便、食欲不振などの腸炎の症状が出ることがあります。一般的に免疫の低いヒナや重度感染の場合で発症します。
糞便検査により寄生虫の有無を確認します。


治療・予後
コクシジウムに有効な薬を使用します。腸炎の症状が出ている場合は、胃腸薬や二次感染防止のための抗生剤や抗真菌剤を使用します。
お迎え時の検診で早期発見・早期治療をおすすめします。また、新しい鳥をお迎えするときは、検査するまで先住の鳥と一緒にしないことなどが予防になります。
鳥クラミジア症
Chlamydia psittaci(クラミジア シッタシ)という細菌が原因での病気です。
人に感染することがある人獣共通感染症であり、「オウム病」とよばれます。460種類以上の鳥類で報告があり、ほとんど全ての鳥種で感染すると考えられますが、国内では減少傾向にあります。ただし、輸入個体から検出されることがあり、オウム目(オウム類、インコ類、ローリーなど)、およびハト目では感受性が高くなっています。
乾燥した糞便の飛沫や、呼吸器系からの分泌物、涙液、尿、羽毛のフケなどの吸入・摂取などによる水平感染や、親からヒナへの給餌、卵を介してなどの垂直感染があります。
人に感染すると、肺炎などの気道感染症を引き起こします。
症状
無症状のことが多いですが、ストレスを受けて免疫が低下した際に発症することがあります。症状は様々で、くしゃみ、鼻水、咳、結膜炎、尿酸の黄〜緑色化、下痢など、この病気特有の症状が少ないことも特徴です。
診断は、糞便の他に、咽頭や排せつ腔を綿棒などでふき取る、血液を検体とした遺伝子検査(PCR検査)などを用います。クラミジアの排せつは断続的なこともあるため、便を検体とする際は1週間分集めることをおすすめしています。
治療・予後
抗生物質の投与を行います。症状が消えても、完全に菌を除去することは困難です。その場合、ストレスで再発症する可能性があるため、注意が必要です。
陽性の鳥は隔離する必要があります。
また、人への感染防止のために、マスク・手袋の着用、手洗い・うがいなどの一般的な衛生管理が重要です。
マイコプラズマ病
マイコプラズマという細菌による病気で、多くの鳥類で見られる呼吸器系の感染症です。セキセイインコ、オカメインコ、ラブバード、フィンチ類(ブンチョウなど)で一般的に見られ、キエリボウシインコ、ヒメコンゴウインコなどでの報告もあります。
呼吸器や眼の分泌物内から排せつされ、経口感染や空気感染を引き起こします。他にも、卵を介した感染や親鳥からヒナへの給餌の際などの垂直感染もあります。一般的に、感染力は低いとされています。
鳥が感染する細菌と、人のマイコプラズマ肺炎の細菌は別種なので、人に移ることはありません。
症状
結膜炎や鼻水、くしゃみ、咳、鼻炎・副鼻腔炎、呼吸困難、呼吸音、気のう炎、肺炎、関節炎などの症状を示します。二次感染による症状も問題となることがあります。
咽頭や気管の綿棒でのふき取り、鼻汁を検体とした遺伝子検査で診断します。
病原性があるかの判定は困難で、レントゲン検査にて、肺炎や気のう炎の兆候がないか確認します。
治療
マイコプラズマに有効な抗生剤を使用します。症状が改善してもマイコプラズマを完全に除去することは難しく、再発することもあります。二次感染を防止するために、抗真菌剤を使用することもあります。
飼い鳥で使用できるワクチンはありません。
おわりに
飼い鳥における真菌性疾患と寄生虫疾患などを紹介しました。どの感染症も、早期発見することが何よりも重要です。末永い愛鳥との暮らしを楽しむためにも、健康診断などを活用して、感染症対策をしてみてください。
【執筆者】
永嶋惇平(ながしまじゅんぺい)
獣医師。とくしま鳥の病院(徳島県徳島市)院長。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。神奈川県の鳥類専門病院「横浜小鳥の病院」に勤務後、2025年5月に徳島県徳島市にてとくしま鳥の病院を開院。鳥類臨床研究会、Association of Avian Veterinarians(鳥類獣医師協会)所属。飼い主と動物に寄り添った診察に尽力している。主な著書に『15歳まで文鳥が元気で長生きする育て方』(エクスナレッジ、2026年)。
X:@bird_vet
Instagram:@jumpeitoritori
LINE:とくしま鳥の病院

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