今年の夏に開催した写真展では、作品の色彩について、たくさんの感想をいただきました。
旅先で出会った景色を見返すと、色とともに記憶がよみがえります。今回は、その中から「白」の記憶をたどってみたいと思います。
ミハス(スペイン)
スペイン南部・アンダルシア地方にあるミハスは、白い壁の建物が連なる美しい村でした。色鮮やかな花々は白い壁によく映え、どこを切り取っても絵になる風景が広がっていました。

人気な観光地だけあって、朝早くから少しずつ人が増えていきますが、観光客の少ない早朝の街歩きは静かで、なんともいえない贅沢な時間でした。
そんな早朝の白い街で出会った猫たち。なかでも記憶に残っているのは黒猫の姿です。白い壁が続く街並みの中に現れた白と黒のコントラストに、目を奪われました。

また、白い壁の間をロバがゆっくりと歩いていく姿も鮮明に覚えています。その様子を見送る猫の姿もまた、この街らしい風景に思えました。

シディ・ブ・サイド(チュニジア)
地中海を見下ろす丘の上にある、シディ・ブ・サイド。
白い壁に、チュニジアンブルーと呼ばれる鮮やかな青の扉や窓枠が目を引きます。その美しい色の組み合わせに、街を歩いているだけで心が躍ります。

お土産物屋の軒先には色鮮やかな商品が並び、白と青の街並みに華やかな彩りを添えていました。その中には猫の姿もありました。

滞在中には、あいにくの大雨に見舞われました。けれど、その雨があったからこそ気づけた景色がありました。強い日差しの下ではまぶしく感じた白い壁が、雨上がりにはしっとりと落ち着いた表情を見せていたのです。天気によってこんなに印象が違うのかと驚きました。

モルディブ
モルディブで思い出すのは、白い砂浜と透き通った海です。

朝のビーチを歩いていると、猫がついてきてくれました。
最初に一緒に歩いた茶トラ猫は、相棒のように私のペースに寄り添って歩いてくれる子でした。

しばらくすると、入れ替わるようにグレーの猫が登場しました。こちらは超マイペースで、あちこち寄り道をしながら、自由気ままに歩いていました。

性格がまったく違う2匹との朝の散歩は、楽しい思い出として心に残っています。
サントリーニ島(ギリシャ)
サントリーニ島といえば、白い建物が連なる街並みを思い浮かべる方も多いでしょう。もちろん、その白も印象的でしたが、私にとって忘れられないのは夜明け前の景色です。
ある朝外に出ると、街全体が深い霧に包まれていました。建物も道も白く霞み、夢か現実かわからなくなるような不思議な光景が広がっていました。

そんな霧の中に、黒猫のシルエットがぼんやりと浮かび上がっていました。

やがて日が昇って霧は少しずつ晴れ、それまで幻想の世界だった街も、ゆっくりと輪郭を取り戻していきました。そこでようやく、自分が見ていたものが夢ではなく、現実だったのだと実感しました。その感覚は、今でもはっきりと覚えています。
旅先で出会った、さまざまな白。
陽射しを浴びてまぶしい白。雨に濡れて落ち着いた白。砂浜の白。そして霧に包まれた白。
ひとことで「白」といっても、その表情はさまざまです。
そして、その景色の中には猫がいました。猫たちのことを思い出すたび、その時に見た白い景色も一緒によみがえってきます。
【文・写真】
町田奈穂(まちだ・なほ)
写真家。水中写真家・鍵井靖章氏との出会いをきっかけにカメラを始める。世界各地で出会った猫たちを通して、その土地ならではの空気感を捉える独特の視点と、印象的な色彩表現が特徴。これまでに40ヶ国以上を訪れ、2023年には世界一周を達成。富士フイルムフォトサロン 東京・大阪をはじめ、多数の個展を開催。2026年8月、写真集『CINEMATIC』を刊行。過去には、パワーリフティング世界ジュニアチャンピオンの経歴も持つ。
Instagram:cat_serenade
X:naho_umineko

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