旅の途中で、余白のような時間が生まれることがあります。経由地での乗り継ぎ時間が長いときは、そんな余白を埋めようと、空港から出て街を散策することがあります。ほんの数時間でも、思いがけず猫に出会えたり、印象に残る出来事が起きたりするものです。
今回は、最近トランジットで立ち寄ったバンコク(タイ)とクアラルンプール(マレーシア)での小さな旅の話です。
バンコクは、これまで何度も乗り継ぎで訪れている街です。空港から中心部までは電車で30分ほど。大好物のタイ料理を食べるためだけでも、街へ出る価値があると感じています。

時間があれば寺院にも立ち寄ります。都会でありながら、どこか懐かしさを感じさせるところもこの街の魅力です。にぎやかな通りから少し離れるだけで、静かな空気に包まれます。

そして、毎回心を奪われるのは、束になって複雑に絡み合う電線です。ごちゃっとした電線を見ると、「ああ、タイに来たな」と実感します。

猫との出会いは、路地裏や店先でふと訪れます。店の前でぼんやりしていたり、バイクの陰でくつろいでいたり、上からこちらを眺めていたり。数は多くなくても、歩いている途中で自然に姿を見せてくれるのがうれしいところです。


一方のクアラルンプールは、何度もトランジットで来ていながら、今年のカンボジア旅行で初めて空港の外に出ました。これまでは深夜から早朝の乗り継ぎが多く、空港で寝て過ごすことがほとんどだったからです。今回は日中に時間があり、ようやく街まで足を伸ばすことができました。
こちらも空港から街までは電車で30分ほど。到着してまず感じたのは、想像していた以上に都会だということでした。高層ビルが立ち並び、道路も広く、街全体が整った印象を受けました。バンコクの雑多な熱気とはまた違う、洗練された雰囲気がありました。

公園に入ってみると、一匹の猫がのんびりと敷地内をパトロールしていました。しばらくすると立ち止まり、その場で毛づくろいを始めました。背後の建物の壁の模様が可愛らしく、印象に残っています。


そのあと屋台街へ向かうと、空が急に暗くなり、スコールが始まりました。屋根のある場所でフルーツジュースを飲みながら雨宿りをしましたが、しばらく待っても止みそうにありません。少し移動してみたものの、初めての街で道に迷ってしまったので、配車アプリでタクシーを呼んで散策は終了です。猫にはあまり会えませんでしたが、南国らしい出来事も含めて印象に残る時間になりました。

乗り継ぎ時間は、空港で過ごすだけの時間にもできますが、外へ出れば小さな旅になります。数時間の寄り道でも、その街の空気は確かに感じられるものです。そこで猫に出会えれば、なおさら記憶に残ります。これからも時間があれば、街へ出てみたいと思います。
【文・写真】
町田奈穂(まちだ・なほ)
猫写真家。水中写真家・鍵井靖章氏との出会いをきっかけにカメラを始める。「猫×彩×旅」をテーマに、世界中を旅しながら各地で出会った猫たちを撮影。これまでに35ヶ国以上を訪れ、2023年には念願の世界一周を果たす。2023年、2024年に富士フォトギャラリー銀座にて個展を開催。その他企画展やSNS等を通じて作品を発表している。
Instagram:cat_serenade
X:naho_umineko
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