世間一般から見たカエルのイメージは、大きく2通りに分けられると思います。1つは、ゴツゴツとした外見にどっしりとした印象のヒキガエル。もう1つは、ツルンとした典型的なカエルらしい印象のアマガエルです。この2種はとても有名ですが、愛好家の中では、日本の美しいカエルの代名詞とされる「イシカワガエル」や、今回紹介する「ナミエガエル」などの人気が特に高いです。
一昔前は、カエルの話をしても「そもそもカエルが嫌いだ」という人が多かったのですが、最近はカエルの人気が世間に浸透してきたような実感があり、私としては嬉しく思っています。私の周りだけかもしれませんが……。

外見的な特徴
ナミエガエルは、沖縄北部のやんばると呼ばれる地域でしか見ることができません。名前の由来は、帝国大学理科大学博物館(現、東京大学総合博物館)の浪江元吉さんに由来します。
このカエルの魅力の1つは、その体型です。たとえるなら、ふっくらとしたおむすび形でぽっちゃりしています。手足が太く短いためでしょうか。正面から見ると黒目はひし形をしていて、とてもキュートです。
日本のカエルでは、普通オスよりメスが大きくなるのですが、ナミエガエルはオスのほうが大きくなります。さらに、他のカエルと比べて、オスは頭が大きくなることが知られており、体長8~12センチメートルほどと、日本のカエルの中では大きな部類です。
昔は食用にもされたほど優れた肉質で、とてもおいしかったそうです。今では天然記念物なので食べてはいけません。
生態の特徴
かわいらしさとは裏腹に、大食漢なことが知られています。目の前に来るものはとりあえず、すべて食べるようです。中でもカニが大好物で、下アゴにある牙状突起(がじょうとっき)で素早く動くカニをしっかりとくわえて丸呑みします。水中でも獲物を捕まえることができるといわるほどの食いしん坊です。
普段は渓流などの水辺近くに生息していますが、雨の晩に川縁や湿地を跳ねていることがあります。川底と同じような体色をしているため、見つけるのは非常に難しく、見つけてもすぐに水に飛び込んだり、岩と岩の隙間の奥深くに逃げ込みます。ただし、しばらくじっとしていると、警戒心を緩めてほっこりとした顔を覗かせてくれます。とても愛らしい、私のお気に入りのカエルの1種です。

おわりに
非常に限られた場所に暮らすカエルのため、この環境を崩すことなくしっかりとルールを守り、距離を置いて観察することがとても大切です。まさしく、世界遺産「やんばるの森」を象徴するいきものの1種です!
そんなかれらの限られた生息地を歩いていると、ほっぺたに白い斑紋のあるナミエガエルの幼生に出会うこともあります。幼生には、成体とはまた違ったかわいらしさがあるのがたまりませんね。


【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(サワガニ、スッポン、田んぼのいきもの、カナヘビ、小型サンショウウオ、ニホンイシガメ、ニホンヤモリ、トカゲ、イモリ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、オオサンショウウオ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』、『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ! イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。

「いきもののわ」では、ペットや動物園・水族館、野生動物、動物関連イベントなど、いきものにまつわる様々な情報をお届け中!
メールマガジンでは、特集記事の紹介や次月特集の一部をチョイ見せ!
登録はこちらのフォームから。ぜひご登録ください!
各種SNSも随時更新中! ぜひフォローしてください!
