『日本のいきものビジュアルガイド はっけん! サワガニ』発刊

緑書房ではこのたび、『日本のいきものビジュアルガイド はっけん! サワガニ』(写真:関 慎太郎、編著:福家悠介)を発刊しました。制作を担当した編集者より、本書のおすすめポイントを紹介します。

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サワガニのこと、どれくらい知っていますか?

サワガニは、その名の通り海や汽水域ではなく「沢(サワ)」にすむカニの仲間で、日本各地の河川や渓流に生息しています。水中はもちろん、水際の石や倒木の下を探すと出会うことができるほか、雨が降ると周辺の路上や森林内を歩いている姿を目にすることもあります。このように馴染み深いサワガニですが、他の多くのカニと異なり、プランクトンとしての幼生時代を送らずに非常に大きな卵の中で成長し、子ガニとして孵化するという特徴があります。なかには、一生を完全に陸上で過ごすサワガニの仲間もいます。知っていましたか?(本書で紹介しています!)

しかし、サワガニの自然史は、まだまだ謎に包まれているようです。たとえば、サワガニの体色は地域によって異なることが知られていますが、なぜ体色が分かれているのか、体色にどんな機能があるのかについては研究の余地があるとされています。また、日本のサワガニのルーツや進化の歴史についても、今なお研究が続けられています。

サワガニの体色のバリエーション。全て同じサワガニだが、地域によって体色は大きく異なる(「クローズアップ」より)

また、日本には南西諸島を中心に20種以上のサワガニ類が生息していますが、これらの種の多くは限られた島嶼部(とうしょぶ)に分布しており、絶滅の危機に瀕しているものも少なくありません。そのため、これらの種についても理解を深め、周辺の環境とともに守っていく取り組みも今後ますます重要になると思われます。

トカシキオオサワガニ。世界で渡嘉敷島(とかしきじま)のみに分布する、日本最大のサワガニ類。甲幅(甲羅の幅)は63mmにも達する。写真:関 慎太郎

本書は、このように身近でありながらもその自然史についてはまだ分かっていない点も多いサワガニについてまとめた一冊です。色々な分野・分類群の研究者・専門家たちが、サワガニ類に関する最新の知見について、豊富な写真とともにやさしく解説します。

多様で不思議がいっぱいなサワガニの世界をのぞいてみよう

以下に、本書の内容の一部を簡単に紹介します。

●サワガニの暮らしを写真で紹介する「巻頭ビジュアル」
●サワガニの体の特徴的な部位を写真とともに解説する「クローズアップ」
●日本に生息しているサワガニ科24種を生態写真とともに解説する「サワガニ図鑑」
●サワガニの1年を生態写真とともに追う「サワガニの春夏秋冬」
●サワガニを飼育する際に必要な環境やエサ、注意点などを解説する「サワガニを飼ってみよう」
●サワガニについての素朴な疑問に答える「サワガニQ&A」
●生態や進化、保全状況などを取り上げる「今、起こっていること」
●人間との文化的な関わりを紹介する「文化・歴史のなかのサワガニ」
●サワガニ(甲殻類)の観察方法や研究成果を研究者自身が解説する「研究者からのメッセージ」、「自由研究のすすめ」
●サワガニを展示している施設を紹介する「サワガニに会える施設」
●サワガニの研究に取り組む機関を紹介する「サワガニを探求する大学」

「クローズアップ」では、部位や生態を写真とともにじっくり学ぶことができる
「サワガニ図鑑」では、日本に暮らすサワガニを一挙に紹介。生物多様性を実感しよう!
親離れする子ガニ。サワガニ類は孵化した時点で親と同じ形(「サワガニの春夏秋冬」より)
「サワガニQ&A」では、生息地や寿命、生態といった素朴な疑問に答える
サワガニを中心とした、カニ類に関する最新の研究トピックや観察事例を通して、身近な自然を捉え直すことの重要性を学べる(「研究者からのメッセージ」より)

【主要目次】
・巻頭ビジュアル サワガニのくらし
・どこにいるの? なにがいるの?/大きなハサミ/サワガニの全身/子ガニを抱える/やんちゃな子サワガニ/
・体色の異なる小さなサワガニ/死んだ魚を食べる/水中ですごす/陸上ですごす
・サワガニとは/サワガニの系統関係
・クローズアップ
 からだの名前/サワガニのからだ/サワガニの顔/いろいろな部位/オスとメス/どこがちがうかな?/
 幼体/サワガニの色彩変異
・サワガニ図鑑
 アマミミナミサワガニ/カクレサワガニ/クメジマミナミサワガニ/オキナワミナミサワガニ/
 トカシキミナミサワガニ/ケラマサワガニ/アラモトサワガニ/サワガニ/ミカゲサワガニ/コシキサワガニ/
 ヤクシマサワガニ/ミシマサワガニ/オキナワオオサワガニ/イヘヤオオサワガニ/クメジマオオサワガニ/
 トカシキオオサワガニ/カッショクサワガニ/ムラサキサワガニ/ミネイサワガニ/ミヤコサワガニ/
 リュウキュウサワガニ/サカモトサワガニ/ヒメユリサワガニ/ヤエヤマヤマガニ
・サワガニの春夏秋冬
 春の川の上流/小競り合いするオス/夏の川の上流/交尾/卵と孵化/親離れ/小さなサワガニの捕食/
 食べられる/秋の川の上流/捕食/冬の小川/冬眠/サワガニとともに
・コラム 島におけるサワガニ類の共存から考えるニッチと適応進化
・サワガニを飼ってみよう
 飼育をはじめる前に/1 環境をととのえよう/2 エサをあげよう/3 水換え・掃除をしよう/4 冬場の飼い方/5 注意すること[奥山 秀輝(豊平両生爬虫類研究所代表)]
・とことんサワガニ
・サワガニQ&A
 今、起こっていること
 体色のバリエーションと機能[福家 悠介(摂南大学農学部応用生物科学科 助教)]
 サワガニは複数種のあつまり?[福家 悠介(摂南大学農学部応用生物科学科 助教)]
 サワガニは海を越えられる?[福家 悠介(摂南大学農学部応用生物科学科 助教)]
 サワガニの分布と進化の歴史[福家 悠介(摂南大学農学部応用生物科学科 助教)]
 サワガニの保全と、つかまえるときの注意[皆藤 琢磨(環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室/指定検討第二係長)]
 サワガニ科のレッドリスト[入口 友香( (一財)自然環境研究センター 主任研究員)]
・文化・歴史のなかのサワガニ
 サワガニは神さまのお使い!?/カニの恩返し!?/『さるかに合戦』の“歴史”がおもしろい!/
 江戸時代から伝わるお菓子の物語/江戸時代に描かれたサワガニ/サワガニを食べるための工夫/
 薬として使われていたサワガニ/町の印にサワガニ/家のマークに、カニがえらばれた理由/
 サワガニ(蟹)は夏の季語[北村 美香((同)結creation代表)]
・研究者からのメッセージ
 ①身近な生きもの「サワガニ」の謎と魅力にせまる![國島 大河(摂南大学農学部応用生物科学科講師)]
 ②テレビや本のなかのサワガニを研究する ~文化サワガニ学入門~[大土 直哉(東京大学大気海洋研究所大槌沿岸センター助教)]
 ③カニが種をまく? ──身近な自然にひそむ“世界初”の発見[末次 健司(神戸大学大学院理学研究科教授/神戸大学高等学術研究院卓越教授)]
・自由研究のすすめ
 ①サワガニマップをつくってみよう[高田 賢人(和歌山県立自然博物館 学芸員)]
 ②サワガニの「利き手」の謎[細 将貴(早稲田大学 教育学部 准教授)/快樂 侑汰(早稲田大学博士課程/助手)]
・サワガニに会える施設
 ①すさみ町立エビとカニの水族館/②海遊館/③和歌山県立自然博物館/④滋賀県立琵琶湖博物館
・サワガニを探究する大学
 ①信州大学 理学部 理学科/②琉球大学 熱帯生物圏研究センター

サワガニを通じて、人生を豊かに

著者陣から読者の方へのメッセージを、本書から一部抜粋してお伝えします。

関氏「本書で新たな知見を得たみなさんが、私たち著者陣と同じようにフィールドに出てサワガニにふれ、この魅力あふれる世界の虜になってもらえるとうれしいです。」(「はじめに」より)

福家氏「どこかでサワガニを見かけたときに、生息環境や体色、利き手などに少しでも興味や関心を向けていただければ、編著者冥利に尽きます。サワガニをつかまえてひっくり返したら、オスとメスがわかる。それだけでもなんだかうれしいものです(みんなそうですよね?)。」(「おわりに」より)

本書を通じて、生きものに関心のある方々がサワガニをはじめとする自然が有する多様性や奥深さを捉え直し、サワガニを取り巻く環境や進化の歴史、興味深い生態の数々に思いをはせるきっかけとしていただければうれしく思います。

陸上ですごすサワガニ。写真:関 慎太郎

【写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
自然写真家。1972年兵庫県生まれ。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。本シリーズ『日本のいきものビジュアルガイド』をはじめ、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』、『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ! ヤモリ』(岩崎書店)、『日本産サンショウウオ図譜』(技術評論社)など著書多数。
ウェブサイト https://www.az-relief.com

【編著】
福家悠介(ふけ・ゆうすけ)
摂南大学農学部応用生物科学科 助教。1994年埼玉県生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。博士(理学)。国立遺伝学研究所でのポスドクを経て、2025年度から現職。日本や東南アジアの淡水魚類、淡水エビ類を対象として、自然史から進化生態学まで、さまざまな研究を行っている。主要な研究テーマは、ミャンマーの古代湖であるインレー湖の魚類相形成に関する研究、淡水エビ類の外来種と在来種の生態学に関する研究、小笠原諸島における淡水甲殻類の進化と保全に関する研究の3つ。塩分耐性のない生きものが好き。

※著者の所属、略歴は出版時の情報です。

【本書概要】
・書名:日本のいきものビジュアルガイド はっけん! サワガニ
・写真:関 慎太郎
・編著:福家悠介
・発行:緑書房
・体裁:A5判 160頁 オールカラー
・定価:2,420円 (本体2,200円)
・発売日:2026年4月30日
・ISBN978-4-86811-058-3

■お問い合わせ先
株式会社 緑書房 販売部
〒103-0004 東京都中央区東日本橋3-4-14
TEL:03-6833-0560
https://www.midorishobo.co.jp/

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