赤血球や白血球などの細胞を擬人化して、体の中で起きていることをわかりやすく描く『はたらく細胞』(講談社、2015~2021年)。同作品は人間の体の中を題材にしていますが、「猫の体の中」を題材にしたスピンオフ『はたらく細胞 猫』(講談社、2023~2026年)が注目を浴びています。
今回は、そんな同作品の原作を担当した蒼空チョコさんに、作品に込められた思いなどをお聞きしました。
飼い主さんに知っておいて欲しい正しい知識を伝えたい
―プロフィールを教えてください!
公務員獣医師や動物病院の獣医師を経て、現在は専業作家として動物や獣医療をテーマにした小説や、漫画の原作を描いています。作家活動は学生時代から続けていて、これまで『獣医さんのお仕事in異世界』(アルファポリス、2013~2025年)や『勇者一行の専属医』(集英社、2023~2025年)など、さまざまな作品を描いてきました。

―『はたらく細胞 猫』とはどのような作品なのでしょうか?
猫の飼い主さんが動物病院で聞いたけど理解しきれない話や、聞きたいけどなんて聞いたらいいかわからない話などを深堀りして、猫の病気の予防や役に立つ知識を楽しく学べる作品です。

本家には老若男女幅広い読者がいるので、飼育本を読む気になれない子どもから、猫と暮らしている大人まで、多くの人に猫の知識を養ってもらえる作品を目指しました。
―話を考えるうえで、意識していたことは何でしょうか?
飼い主さんが出会う可能性が高い順に話を展開していきました。また、子猫のうちから知っておいて欲しいことも、優先して登場させています。
―第1話が「ダニ予防」と、猫と暮らしていない人でも知っているくらいポピュラーな話題ですね。
単行本第2巻では「乳腺腫瘍」、いわゆる「乳がん」を取り上げています。猫の乳がんは、悪性になる確率が8~9割ととても高いのですが、避妊手術を初回発情から2回目発情までに行えば約9割の乳がんを防ぐことができます。
このような、早いうちから知っていれば将来役に立つ知識を中心に取り上げています。
―獣医師目線で、飼い主さんに必要な知識を優先的に取り上げているのですね。
そういった知識は、獣医師側が伝えたいと思っても、飼い主さん側から聞かれないと教えられる機会がなかなかありません。SNSでたびたび話題になったりしますが、その反響も限られた一部にしか届きません。なので、本作品を通してわかりやすく伝えたいと考えています。
―とても強い想いが込められているのですね。

第14話で「猫フィラリア症」、第22話では「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」なども取り上げています。飼い主さんがこれらを読んで「これなら絶対に対策するべきだ」と思ってもらえるように、ひいては獣医業界に貢献できる作品に、というふうに考えていました。
―作中での説明もわかりやすいですが、コラムでの補足も充実していると感じます!
話の大筋は、中学生でも読みやすいように意識しました。コラムや補足説明は、専門書や論文も活用し、獣医学生でも「授業で聞いたところだ!」となったり、飼い主さんが「動物病院で聞きそびれた話だ!」となったりするようにしています。動物病院の先生方が待合室に置きやすい一作になってくれることが目標でした。

―実際に動物病院の待合室に置かれましたか?
SNSなどを見ると、置いていただいている病院もあるみたいです。現場の先生方に「この作品はダメだ!」と言われるのではないかな……と心配していたので、認めていただけたことはとても嬉しかったです。
リアルと作品映えのバランス取りに緊張
―作家活動を始めたきっかけは何ですか?
小学生の頃から、二次創作やオリジナルの小説を書いていて、作品作りが楽しくて続けていました。
―獣医師と作家の兼業は大変だったのではないですか?
大変でしたね(笑)
隙間時間や睡眠時間を削って執筆していたので、ときには体調をくずしてしまうこともありました……。
ただし、作品作りにおいて、獣医師時代の経験が大きな力になっています。
―専門知識や現場を知っているということはとても大きなアドバンテージですね。
作品の様々な要素の総合力として、「この人にしか描けない」というオリジナリティーがとても重要です。そういった点では、獣医師の知見は一つの武器です。
一方で、専門ネタを扱う以上、間違った情報は決して流してはいけません。そういったことがないように専門書や論文を読みつつ、作品映えするようなバランスを取ることを意識しています。
―世界観を保ちながら正しい知識を伝えるバランスが難しいのですね。

これからも獣医業界に貢献できる作品を届けたい
―今後はどのような作品に挑戦してきたいですか?
監修が付くくらいの作品を目指しています。監修が付く作品は、一般的には「リアルで本格的な作品なのかな?」といったイメージ程度かと思います。しかし、作家として監修が付く作品を目指すことはとても大変なことです。
関わる人が増えればトラブルや工数が増えるなど、超えるべき壁がたくさん発生します。
―これからも、飼い主さん向けの、本格的だけど楽しく学べる作品を目指しているわけですね。
実は、新しい企画も進行中なので、楽しみにしていてください!
―本当ですか! とても楽しみです!
―最後に、この記事を読んでくださっている方々へメッセージをお願いします。
猫は完全室内飼いをして、ノミ・マダニ対策をすれば一緒に過ごせる時間が伸びると考えられています。『はたらく細胞 猫』も参考にしながら、楽しい毎日を送ってください!
―ありがとうございました! これからの作品も楽しみにしています!
蒼空チョコ
獣医師としての知見を強みに、動物関連をテーマとした作品を手掛ける小説・文字原作家。2013年に『獣医さんのお仕事in異世界』でデビュー。主な著書に『勇者一行の専属医』(集英社、2023~2025年)、『はたらく細胞 猫』(講談社、2023~2026年)など。
X:@Choco_Aozora
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