前回はブラックバス(標準和名:オオクチバス、コクチバス)を題材に、特定外来生物とは何かというおはなしをしました。改めておさらいをすると、「特定外来生物」とは、外来生物法で飼育や生きたままの移動、売り買いなどに罰則が定められた外来種のことです。違反をすると、個人だと3年以下の懲役、または300万円以下の罰金、法人の場合1億円以下の罰金という、非常に重い罪が科されます。
そんな重い罪になると知ったら、恐ろしくてとてもじゃないけれど「特定外来生物を家で飼おう!」なんて思わないですよね。
ところが、ややこしいことにペットとしてポピュラーないきものと特定外来生物の見た目がよく似ている場合があるのです。
その代表格がメダカのそっくりさん、カダヤシです。

蚊を絶やす? カダヤシってどんな魚?
カダヤシは、オスが3〜4センチメートル、メスは5センチメートルほどの北米原産の魚です。
蚊の幼虫であるボウフラを食べることから持ち込まれたという経緯があり、「蚊を絶やす(かをたやす)」→「蚊絶やし(かだやし)」が語源となっております。
メダカ(標準和名:キタノメダカ、ミナミメダカ)とは見た目や大きさが似ていて、生息する場所も身近な水路や池などと、重なっています。

そのため、「川や池で捕まえた魚をメダカだと思って飼っていたらカダヤシだった! 悪気がないのに外来生物法違反だ!」なんてこともあり得るわけです。
ちなみに、メダカはダツ目、カダヤシはカダヤシ目に分類されるので、仲間としてはやや遠いです。ダツ目にはサンマやトビウオも入ります。メダカとトビウオが近い仲間なのは少し驚きですよね。
カダヤシ目には観賞魚として人気のグッピーがいて、グッピーも野外に放たれた個体が外来種として増えて問題になっています。

カダヤシやグッピーに共通する大きな特徴は、「卵胎生」であるということ。つまり、魚なのに卵ではなく、子どもを直接水中に産み出すことができます。
メダカは卵を産む「卵生」の魚で、卵を産みつける水草がなければ増えることができません。一方、カダヤシは水草のない環境でもどんどん増えていきます。
メダカと生息する場所が競合する上に繁殖力で勝るので、カダヤシはどんどん生息地をひろげています。
メダカといえば、童謡「めだかのがっこう」でもお馴染みの通り、かつてはとても身近でどこにでもいる魚でした。しかし、近年ではすっかり数を減らし、絶滅危惧種となってしまいました。
水辺の環境の悪化や開発も要因の1つですが、ブラックバスやカダヤシなどの外来種による影響も大きいといえます。また、品種改良されたメダカが放流されている場合もあり、深刻な遺伝子汚染の原因となっています。
メダカと見分けられるようになろう!
ここからは実際に、メダカとカダヤシの見分け方をお伝えします!

まず注目するべき点は、尾びれの形です。カダヤシの尾びれは丸く、メダカの尾びれは角ばっています。これは、それぞれのオスメスに限らずに共通する特徴です。

続いては、尻びれを見てみましょう。メダカは幅広い四角形の尻びれですが、カダヤシの場合は、メスは丸っこくて小さめな尻びれで、オスは細長く伸びています。

先に述べたとおり、カダヤシは卵胎生なので、体外受精ではなく交尾をする魚です。この伸びた尻びれは交接器の役割を果たしています。
このように、よく観察するとカダヤシとメダカは違う点がたくさんあります。
これらの特徴をしっかり覚えて、「うっかり飼って犯罪」なんてことにならないようにしましょう!
【執筆者】
さかな芸人ハットリ
お笑い芸人。1988年9月5日神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業。魚を愛する水産系芸人として、お笑いを通して魚の魅力や外来種問題を伝える。日本さかな検定(通称ととけん)1級。2024年8月から、各地で悪影響を及ぼしている外来種を調理して提供する「外来種キッチンカー」の営業を開始。同年12月、ハンドブック「結局、外来種って何がいけないの?」(監修:環境省)を作成・配布開始。主な著書に「日本一魚好きな芸人の魚図鑑」(KADOKAWA、2021年)。
ホームページ:ハットリ水産
X:@hattori95
YouTube:さかな芸人ハットリ&外来種キッチンカー
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